皮革産業の論文はある?皮革産業や革靴の課題からサステナブルな論文まで

皮革産業の論文はある?皮革産業や革靴の課題からサステナブルな論文まで レザー業界ニュース

こんにちは、KAJIです。
皮革産業の論文がよく探されているようですね。

テーマ別にまとめてみましたので
ぜひ活用していただければ嬉しいです。

  1. 皮革の論文
    1. 皮革の特性
      1. 要約(引用)
        1. 皮革とは
        2. 皮革の特徴
  2. 皮革産業の論文
    1. 皮革産業の現状と課題 ― 経済連携協定を踏まえた対応 ―
      1. 要約(引用)
        1. 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の影響
        2. 皮革関連団体の取組
    2. 皮革産業の民俗誌 ー姫路の事例ー
      1. 要約(引用)
    3. 令和元年度 皮革産業振興対策調査等(海外主要国における皮革関連産業のサステナビリティ活動等の動向・対応調査)調査報告書
      1. 要約(引用)
        1. レザー産業へサステナビリティを求める動き
        2. 皮革関連産業におけるサステナビリティへの配慮に関する現状と課題
        3. サステナビリティへの配慮の必要性
        4. 皮革メーカーによる取り組み方策
        5. アニマルウェルフェアへの配慮の方向性
        6. 官民および皮革関連産業界、関連業界等の連携による取り組み環境整備
    4. 地場産業×デザインの困難性―台東区皮革産業の衰退を例にしてー
      1. 要約(引用)
  3. 靴(履物)産業の論文
    1. 履物産業を巡る最近の動向 令和2年4月 経済産業省製造産業局生活製品課
      1. 要約(引用)
        1. 日本の履物(靴)産業の現状
        2. 革靴/履物産業でみられる新たな動き
    2. 令和元年度 皮革及び革靴産業基盤強化特別振興事業報告書
      1. 要約(引用)
        1. 2009年~2018年までのタンナーの変化
        2. 靴・履物製品市場の10年の推移及び市場実態
        3. 日本の製革産業の方向性・戦略
        4. 製革産業・皮革産業に影響を与える社会要因
          1. 製革産業・皮革産業に影響を与えるファッション産業の変化
        5. 海外市場での展開(可能性)について
        6. 戦略のポイント

皮革の論文

皮革の特性

皮革の特性
㈳日本皮革産業連合会 今井哲夫

そもそも皮革とは?という定義から
皮革の性質について細かく述べた論文です。

要約(引用)

皮革とは

皮革は主に、食肉産業からの副産物を利用したもので、枯渇する資源を原料とする石油製品とは根本的に異なり本来環境に優しい製品である。
しかし、皮革製造で大量の汚水や臭気等を排出するので公害の元のように考えられがちである。
日本では、なめし工場からの排水は個別企業の排水処理施設あるいは下水道に排出され終末処理場で浄化されて河川、海に流入する。
したがって、皮革排水が河川を直接汚染していることはない。
皮革工場からの臭気は、原皮の臭気、脱毛の硫化水素臭、脱灰のアンモニア臭等が主なものであるが広範囲に拡散することはない。

皮革の特徴

皮革の水分は湿度60%で17.5%、湿度80%で22.5%であるから吸湿性は良好である(化学工学便覧、p.706、丸善)。
したがって、靴の内部など多量の湿度を吸収する必要のある部分には天然皮革が適している。

水蒸気を吸収すると発熱する現象がある。
これを吸着熱という。
吸着熱は天然繊維で大きく、合成繊維では小さい。天日で乾したフトンに入ると暖かく感じるのはフトンが温まっているばかりでなく、人体から発生した水蒸気を乾いたフトン綿が吸着し発熱することも暖かさの増加に寄与している。
近年、発熱性繊維が上市されているが、皮革は元々優れた発熱性素材である。

天然皮革は湿気や乾燥により寸法が変化する。
湿度の高いところでは、革の寸法は長くなり、重量が増加する。乾燥状態ではこの逆になる。
手袋や革靴を着用することにより、足や手から発生した水分を吸収して革が膨張することが、革がなじむ原因の一つになっている。

皮革は非常に微細な繊維から成り立っているので、汚れを吸着しやすい素材である。
起毛した革(スエードやヌバック等)や銀付き革でもすれてケバ立った所は微細な繊維が露出しているので汚れやすくなっている。

皮革産業の論文

皮革産業の現状と課題 ― 経済連携協定を踏まえた対応 ―

皮革産業の現状と課題 ― 経済連携協定を踏まえた対応 ―
経済産業委員会調査室 安藤 利昭

経済産業委員会による2016年の論文で、
環太平洋パートナーシップ(TPP)協定によって撤廃された関税の
皮革産業への影響について書いています。

要約(引用)

環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の影響

環太平洋パートナーシップ(TPP)協定により、日本は他の 11 か国に対し、工業製品について 100%関税を撤廃することとなった(品目数ベースの即時撤廃率は 95.3%)。
日本の鉱工業品の関税率は元々高くはないものの(単純平均実行関税率 2.5%)、皮革産業は、小規模な事業所が多く国際競争力に乏しいことから、関税措置によって保護されてきた産業である。
TPPにより関税措置が廃止されると、ベトナムなどからの輸入品の増加により、皮革産業に影響が及ぶ可能性がある。
さらに、EUとの経済連携協定(EPA)がTPPと同レベルの水準で締結され、イタリアなど欧州各国から高級品の輸入が増加すると、国内の天然皮革産業は工芸品という形でしか生き残れない可能性があるとの声もあり、皮革産業が直面する状況は更に厳しさを増すと思われる。
関税撤廃まで一定の期間を設けたものの、TPPによる皮革産業に対する影響が懸念されることから、政府は、2015 年 11 月に取りまとめた「総合的なTPP関連政策大綱」を実現させる予算の中に、皮革関連産業競争力強化事業(平成 27 年度補正予算額 133.3 億円)を盛り込んだ。
同事業は、皮革関連産業の競争力強化を図るため基金を造成するものであり、販路開拓、人材育成、最新設備導入等の経営改善や、転業等を含む構造改善に要する経費の一部を補助することとしている。

皮革関連団体の取組

皮革産業が競争力を獲得し販路拡大を目指す場合、日本製皮革の良さをある程度客観的にアピールする必要がある。
1つの取組として、日本タンナーズ協会が行っている「ジャパン・レザー・プライド」がある。
この取組は、日本国内で生産された天然皮革素材のイメージアップを目指すもので、①日本国内で生産する製革業者が「原皮」等から生産した革を 100%使用していること、②異素材との併用は可とするが、革素材の使用比率は表面積の 60%以上であること、③革製品は日本国内で製造されていること、これらの条件をクリアした場合に商標登録したロゴマークを最終製品にタグ付けし、消費者に日本製をアピールするものである。

皮革産業の民俗誌 ー姫路の事例ー

皮革産業の民俗誌 ー姫路の事例ー
氏田楓

国内の皮革産地として有名な「姫路」の皮革産業について
大学生がフィールドワークを行った結果をまとめています。

論文全体は見つかりませんでした。

要約(引用)

日本に伝わる最も代表的な皮鞣方法は、脳しょう鞣し(鹿皮)と姫路白鞣革に集約される。
日本では姫革、姫路革と呼ばれており、古くは白靼、古志靼、越靼、播州靼とも言われた。
この革鞣方法が江戸時代の中頃、出雲国の古志村から伝えられ、古志靼、越靼の名前の由来になったとも言われている。
中世以降では姫路地域が白鞣革生産の中心地となっていたと考えられている。

天然の姫路白鞣革は現在ではほとんど製造されていない。
それは、手作業で行われる製造方法のため、大変な時間と労力を有するものであること、それに対して生産性が伴わなくなってきたこと、また、相当の技術を要することが大きな要因として挙げられる。

近年では太鼓の音がどんどん高くなっていると言われている。
それは製造過程で薬品を使用するなど、製造における簡素化が原因とされている。
こういった事態も含め、太鼓屋六右衛門では古い伝統の方法で行う太鼓づくり、また、革づくりにこだわりと誇りを持ちながら屋号を継承している。

令和元年度 皮革産業振興対策調査等(海外主要国における皮革関連産業のサステナビリティ活動等の動向・対応調査)調査報告書

令和元年度 皮革産業振興対策調査等
(海外主要国における皮革関連産業のサステナビリティ活動等の動向・対応調査)
調査報告書

令和2年3月27日 経済産業省委託事業 三菱UFJリサーチ&コンサルティング

皮革産業が課題にしている
サステナビリティについての論文です。

経済産業省が大手のコンサルティング会社に依頼して作られた論文なので
質の高い分析が盛り込まれています。

要約(引用)

レザー産業へサステナビリティを求める動き

サステナビリティを含む社会問題の解決のための消費行動は「エシカル消費」とも呼ばれ、我が国も含め関心が高まりつつある。
欧米で環境に悪影響を与える素材として皮革を挙げる人が3割程度存在し、数あるアパレル用素材の中でも上位に位置する。
また、環境や原皮に有害な有毒化学物質の不使用や動物虐待のないことを重視する人々が多い。

皮革関連産業におけるサステナビリティへの配慮に関する現状と課題

欧米を中心に皮革関連産業におけるサステナビリティへの配慮の要請が高まっており、高級ブランドや大手皮革製品メーカーを中心にLWG(Leather Working Group)をはじめとする国際認証を取得している事業者からの皮革調達が拡大している。
高級ブランド、大手メーカー等との取引や、海外輸出を行う皮革メーカーにとって、サステナビリティに関する国際認証の取得が不可欠になりつつある。これはイタリア・フランスの皮革関連産業界および国内の皮革製品メーカー、商社・卸事業者などで一致した認識である。
現在国際的に普及が急速に進むLWG認証は環境パフォーマンスが要求されるなど認証取得のハードルが比較的高い。
「日本エコレザー」は取り組みの一助となるが、国際的な認知不足や、基準がカバーする範囲、基準改定スピードを課題視する声もある。
欧州では一般にアニマルウェルフェアへの配慮が要請され、皮革関連産業でも無視することができない状況にあるが、基本的には「食肉の副産物」であれば許容されている。
日本国内の皮革製品メーカーや商社等でもアニマルウェルフェアに関する海外の状況は注視されており、サプライチェーンにおけるサステナビリティへの配慮の必要性が高まる中で、今後は皮革メーカーも看過することはできない状況にある。
EU諸国では畜産業におけるアニマルウェルフェアの対策が進んでいることを背景に一定程度アニマルウェルフェアに配慮した原皮を調達できる状況にある。
皮革製造でトレンドとなっている原皮調達時のトレーサビリティの確保もアニマルウェルフェア対策として機能している。
一方、国内産原皮は通常、「食肉の副産物」であるという点は充足されるが、畜産業におけるアニマルウェルフェアの対策の進捗や原皮のトレーサビリティの実現可能性の現状から、個々に確認や留意が必要な現状にある。

サステナビリティへの配慮の必要性

皮革関連産業をとりまく国内外の動向や「持続可能な開発目標」(SDGs)等の社会的要請から、今後は国内の皮革製造、皮革製品製造においても、環境・社会・経済の3つの観点から事業活動が及ぼす影響を考慮し、積極的にサステナビリティへの配慮に取り組むことが求められる。
サプライチェーンの上流に位置する皮革メーカーも喫緊の課題として認識し、段階的にでも対応を図っていくことが求められる。
皮革製品メーカーや商社・卸事業者が皮革を調達する際、サステナビリティへ配慮しているかどうかが取引の継続や開始の重要な判断材料になりつつあることに留意が必要である。

皮革メーカーによる取り組み方策

サステナビリティへの配慮を証明する手段として、また取り組むうえでの具体的な指針・マイルストーンとして、LWGやISO14001などの国際認証や日本エコレザーなどの国内認証の取得を目指して、対応を進めることも一つの有効な方策である。
高級ブランドや大手メーカーとの取引や海外輸出展開においては、LWGなどの国際認証取得が不可欠になるなど、サステナビリティへの配慮は宣言ではなく証明が求められるものであることに留意する必要がある。
認証取得にはコストや手間もかかる一方、取り組むことで事業活動プロセスの改善や効率化・生産性向上につながる面もある。何より認証取得により取引先や消費者へのアピールにつながり、新規の取引・顧客の開拓にもつながりやすくなることを考慮する必要がある。
各認証制度は特徴や取得難易度が異なることから、自社が置かれている状況やターゲットとする顧客などを勘案しながら、どのように取り組むか、どの認証取得をめざすかは十分に検討する必要がある。
現在、皮革分野では有名ブランドによって立ち上げられたLWG認証が急速に普及し国際的通用度が高いが、環境パフォーマンスが求められるため設備投資が必要になるなど取得難易度が比較的高く、相応の規模の事業者・工場でないと対応が難しい内容も含まれる。
日本エコレザーはLWGと比べると国際的な通用度は低下するが、皮革製造メーカーの視点を考慮して基準が策定され取り組みやすい。
ISO14001は環境マネジメントシステムの中で最も国際的通用度の高い規格認証であり、マネジメントシステムの確立にもとづいて継続的な改善を図っていくものであることから、初めから環境パフォーマンスが要求されるLWG認証に比べると導入しやすい面がある。国内でも中小事業者向けに提供されているエコアクション21や段階的取り組みを後押しするエコステージといった環境マネジメントシステム認証制度が存在する。
日本エコレザーや環境マネジメントシステムの認証取得から着手し、徐々にLWGといった難易度の高い認証にステップアップしていくことも考えられる。

アニマルウェルフェアへの配慮の方向性

皮革関連産業におけるサステナビリティへの配慮の一環として、アニマルウェルフェアへの配慮にも留意する必要がある。
現状では基本的に「食肉の副産物」であれば許容されるが、特定の皮革素材の使用回避や中止等を求める動物愛護団体等の意見など社会的な要請を注視し、対応を検討していくことが望まれる。
アニマルウェルフェアおよびその他のサステナビリティに関する対策を実施する体制づくりの一環として、国内皮革関連産業における流通の実情を踏まえながら、原皮や皮革のトレーサビリティを確保できるよう調達先への確認等を実施していくことが求められる。
欧州諸国では皮革関連産業のサステナビリティへの対応の主要要素として、トレーサビリティの確保が含まれており、LWGやICECでも要求項目や認証基準に含まれていることに留意する必要がある。
使用される原皮は、国内産、国外産を問わず、可能な限り、トレーサビリティが確保されているものを選択することが望ましい。その際、可能であれば、供給源となる畜産農家での飼養管理や食肉処理場での殺処分の方法がアニマルウェルフェアに配慮されているか確認することが望ましい。

官民および皮革関連産業界、関連業界等の連携による取り組み環境整備

国内皮革関連産業界では中小・零細事業者が多く、サステナビリティへの配慮の取り組みやLWGなどの国際認証取得も容易に対応できないケースも多いと想定されることから、国、自治体、業界団体、皮革メーカー、皮革製品メーカー、商社・卸事業者等が連携して取り組みの環境を整えていくことが求められる。
例:①国、自治体等による、生産性向上とサステナビリティへの配慮(エネルギー効率向上など)の双方に貢献する設備導入等を対象とする補助金の提供、または活用可能な補助金制度等の紹介
②国、自治体、業界団体等による、皮革メーカー、皮革製品メーカーの取り組みの事例、ノウハウ等の情報収集、提供
③皮革関連産業のバリューチェーンを通じた、皮革製品メーカー、商社・卸事業者、皮革メーカーの連携、相互支援
④業界団体や大手皮革メーカー、大手皮革製品メーカーの連携による、LWG等の国際認証取得の推進やPR活動を通じた、国内産皮革・皮革製品の品質とサステナビリティ面での信頼性の国際的発信、認知向上
⑤日本エコレザーなど業界団体等が提供する認証と国際認証における基準の調和・互換性の継続的かつタイムリーな検討や、段階的な取り組みを支援する認証制度その他支援ツール類の整備・提供
⑥皮革産地の分業体制における事業者間連携を通じた、サステナビリティへの配慮の取り組みや国際認証取得(LWG認証等)
国内畜産業におけるアニマルウェルフェア対策の進捗を踏まえつつ、皮革関連産業および畜産業の業界団体等が連携して原皮のトレーサビリティやアニマルウェルフェアへの配慮に関する情報把握のあり方を検討していくことが求められる。

地場産業×デザインの困難性―台東区皮革産業の衰退を例にしてー

地場産業×デザインの困難性
―台東区皮革産業の衰退を例にしてー 
発行者 慶應義塾大学商学部 牛島利明研究会 第13期生

大学生の論文です。

台東区の皮革産業を例に、
メーカーとデザイナーの協業の難しさを書いています。

要約(引用)

現在,地場産業は衰退の傾向にあり,その原因は,国際競争の激化や高齢化,後継者不足等である。
国を始め,地方自治体,商工会等は地場産業の衰退を問題視しており,振興政策が各地で実施されている。
その中でも,地場産業にデザインを取り入れて活性化を図るという試みが注目されていることから,我々はメディアでも話題となっていた東京都台東区の皮革産業に焦点を当てた。
台東区では,台東デザイナーズビレッジ,浅草ものづくり工房といったインキュベーション施設を設立し,若手のデザイナーを育成することで地場産業にデザイン性を取り入れるという他に事例のない特徴のある振興政策を行っている。その政策は,メディアにも取り上げられ,成功事例として評価されている。
しかし,事業所数等のデータから見れば,この政策によって皮革産業の衰退傾向が劇的に改善したと評価することは難しい。

皮革メーカー,台東区の職人,デザイナーへの聞き取り調査を行った結果,確かに衰退傾向が当事者の実感としても改善していないことが明らかになった。
さらに,この政策によってデザイナーから職人に発注が行われ,両者の間に新たな取引関係が結ばれるという
効果が一部に見られた。
しかし,職人はそれぞれが特定の工程のみを担当する分業制をとっており,完成品の販路を持たないため,デザイナーと積極的に連携し,新たな商品を企画・製作するという主体的な動きは生じにくかった。
一方,メーカーは完成した商品を流通させる販路を持っているため,デザイナーと連携した商品を企画し,その商品を製造・販売することが可能な主体である。しかし,メーカーとデザイナーが協働するには問題点も存在していることが明らかになった。
まずデザイナー側の問題点として,そもそも自ら製作を担うデザイナーが多く,職人に製造を委託している現状がある。
一方,メーカーには自社ブランドを展開する企業と,OEM 主体で自社ブランドを持たない(あるいは自社ブランドの比率が低い)企業どちらも見られた。
前者においては,自社内でデザインを行うため,そもそも外部デザイナーへの需要が少ない。
後者に関しては,OEM 委託企業との競合や,販路開拓,マーケティング能力の欠如という問題が,外部デザイナーと連携してデザイン性の高い商品を自力で企画・販売することの障害となっているのである。
以上のような点から,台東区の皮革産業においてメーカーとデザイナーの協働が行われにくい環境にあることがいえる。

靴(履物)産業の論文

履物産業を巡る最近の動向 令和2年4月 経済産業省製造産業局生活製品課

履物産業を巡る最近の動向
令和2年4月
経済産業省製造産業局生活製品課

革靴業界では比較的新しい論文になります。

経済産業省の作った論文で、
カラー版で図も多く読みやすいです。

要約(引用)

日本の履物(靴)産業の現状

日本の履物(靴)産業の市場規模は2018年の日本の履物市場規模は1兆3680億円で、過去十数年間横ばい傾向。
少子化や人口減少の影響もあり、今後も横ばいでの推移が見込まれている。
革靴の出荷額と事業所数の推移はピーク時である1991年に比べ、2017年までで出荷額は約8割、事業所数は約7割減少している。
日本の革靴産業を取り巻く状況 ・国内生産が減少する一方で輸入は増加しており、輸入浸透率は60%程度にまで上昇。
2010年代以降は生産・輸入とも横ばいで推移しており、輸入浸透率にも変化は見られない。

革靴/履物産業でみられる新たな動き

IoTの活用
・マスカスタマイゼーション、ファクトリー・トゥ・コンシューマー
-受発注のデジタル化、生産の自動化、資材・在庫管理の効率化、配送の効率化
・3Dプリンターでの木型・ソールの生産
・パーソナライズ
-3D計測、スマホアプリでの計測の進化、自動リコメンド機能
・パターン/フルオーダーサービスの拡大
・販売チャネルの多様化(オンライン販売の拡大、オムニチャネル)
・センサー機能を活用したスマートフットウェア
-歩行・ランニングフォームの改善、健康増進、疾病予防、音楽やゲームとの連動

高付加価値化・ブランディング
・戦略的な顧客ターゲティング、顧客ニーズに見合った商品開発
・SNSを通じたブランドイメージの発信
・素材に注目した付加価値創造

海外展開
・日本人ならではの繊細なものづくり技術、究極の履き心地
-ビスポークシューズ
・欧州ブランドにはない独自の世界観、デザイン

サステナビリティ
・CO2排出削減
・環境負荷を軽減する素材開発
・素材・製品のトレーサビリティ
・リサイクル

令和元年度 皮革及び革靴産業基盤強化特別振興事業報告書

令和元年度
皮革及び革靴産業基盤強化特別振興事業報告書
令和2年3月
一般社団法人 日本皮革産業連合会
一般社団法人 日本タンナーズ協会

日本皮革産業と日本タンナーズ協会の論文なので
信頼できる論文です。

10年間の日本の皮革産業と革靴産業に触れ、
今後の方向性についても見解を述べています。

要約(引用)

2009年~2018年までのタンナーの変化
  • 全体の従業者数推移としては、2018年の従業者数は2,622⼈、対前年⽐1.3%減であった。2009年との⽐較では388⼈の減少(12.9%減)となった。
    全体の従業員数は減少傾向であるが、ここ2年は2,600⼈台で推移している。
靴・履物製品市場の10年の推移及び市場実態
  • 2018年度に縮小幅が拡⼤した背景には、これまで市場を下⽀えしてきたカジュアルシューズの成⻑が、ブームの沈静化や単価下落によって鈍化してきた影響が⼤きい。
    また、依然として革靴離れに⻭⽌めがかかる兆しはみられず、この革靴の不振も市場縮小の一因となっている。
  • 近年、オフィスシーンでのカジュアル化が浸透すると同時に、消費者の靴に対する価値観や意識が急速に変化している。
    また、スニーカーが一般化してきたことによって、シーズントレンドも薄れつつあるなど、靴・履物業界を取り巻く環境は厳しい。
  • 紳士靴は品質と信頼を備えた⾼価格帯の消費は堅調なものの、中価格帯の消費が鈍化したことで単価が下がり、これらの要因が複合的に絡み合って、現在の市場縮小を招いている。
  • 婦⼈靴はスニーカー需要の⾼まりに⽐例して、「#KuToo(クーツー)」の名で知られるヒール・パンプス強制への反対運動や、秋冬シーズンの稼ぎ頭だったロングブーツが売れなくなるなど、婦⼈靴におけるシーズン・トレンドが希薄化している。
  • 履き⼼地の快適なスニーカーが⼥性の生活に根付いたことで、⾼単価商品の需要が振るわなくなったことも、婦⼈靴市場の低迷に拍⾞をかけている状況。
  • カジュアルシューズは、⼥性を中⼼としたスニーカーの広がりと、それがさらに⼤衆層やシニアにまで広がっている点が拡⼤の⼤きな要因となっている。しかし⼤衆層にまで拡⼤してきた影響から商品単価が下がってきている懸念するメーカーやリテーラーも少なくなく、需要の一巡と単価下落の影響が成⻑率を鈍化させている。
日本の製革産業の方向性・戦略
  • 産業として過渡期を迎えている製革産業及び皮革産業は、産業の弱体化が進むに連れて周辺環境の変化による影響をより受けやすい状態になっている。
    ましてや現在の日本は少子⾼齢化により、全体のマーケットが縮小しており、周辺環境の影響により劇的に変わってしまう可能性は否定できない。
製革産業・皮革産業に影響を与える社会要因
  • ⼈口減少、少子⾼齢化 ⇒絶対的な製品マーケットの縮小
  • 天候不順、温暖化、震災等 ⇒店頭への客足の遠のくリスク、インバウンドの減少による製品マーケットの縮小
  • IT・テクノロジーの進化 ⇒キャッシュレス決済などによって財布を持たなくなる
  • 「働き方改革」の浸透 ⇒在宅勤務など外出の必要がなくなることによるビジネス関連商品の需要低迷(革靴など)
  • 日EU・EPA締結 ⇒輸出拡⼤の機会(日本の革の特徴を認知してもらうことが前提)
  • 原皮調達国の地政学的リスク ⇒原皮など原材料の調達に悪影響
  • 為替変動 ⇒仕入コストに⼤きな影響を与える。
製革産業・皮革産業に影響を与えるファッション産業の変化
  • シェアリングビジネスの浸透 ⇒売ることを前提とした商品の購入、中古品需要増加などによる新品需要の低迷
  • インバウンド需要の市場定着 ⇒⽐較的⾼額製品の需要が堅調に推移
  • 消費者の機能性重視の嗜好 ⇒天然素材よりも合繊、合皮の機能性素材を選択する
  • ガソリン⾞から電気自動⾞への移⾏、自動ブレーキ付帯の義務化 ⇒買い替え需要増加によるカーシート需要拡⼤
  • ミレニアル世代の台頭 ⇒購買⼒は⼤きくはないが、情報発信⼒が強く、市況への影響⼒が強い。
  • コラボレーション商品の展開拡⼤ ⇒革の使い方の拡がり、異業種とのビジネスの可能性
    これまでの調査結果から、製革産業(タンナー)の国内市場でのビジネスの課題としては下記のような点が挙げられる。
    ・「日本の革」の特徴が伝わっていない・差別化が出来ていない
    ・問屋経由ビジネスの限界
    ・靴中⼼の製品需要に限界
    ・後継者問題・⼈⼿不足
    上記に挙げたタンナーの課題に対する対応は、業界の拡⼤・維持のためには必ず⾏っていくべきことであり、いずれの課題への対応策として、以下の要点が挙げられる。
    ①「日本の革」の特徴、良さを訴求するための情報発信⼿段の構築
    ②ダイレクト販売(EC等)構築
    ③靴以外の用途開発・革製品メーカーとの協業推進
    ④海外事業者との共同事業構築
    これまでとは違う、⽬新しい形で海外の革とは違った魅⼒・特徴を打ち出す必要がある。
海外市場での展開(可能性)について
  • 様々な環境の変化や、これまで海外現地を訪問し得た情報を踏まえて、日本のタンナーが海外でのビジネスの可能性を考えた場合、以下の要点を満たす、また検討する必要がある。
    ・日本革の認知向上を⽬的とした情報発信⼿段・体制の構築
    ・日本にしかない素材の訴求、新素材の開発
    ・日本の強みである納期厳守、品質安定性など、ソフト面の訴求(情報訴求)強化
    ・現地で常設展⽰が可能なスペースの設置及び現地でのエージェント等の確保
    ・即時対応可能性なデリバリー体制及び生産体制の構築、及び現地物流倉庫の設置(EU域内拠点の確保)
    ・EU域内企業に対して量的な対応を⾏うための日本国内タンナーのグループ化
    ・EU域内のビジネスに精通した、実績のある現地メーカーとの協業
    日本のタンナーの現状のままでは如何に商品的、価格的に優位性があったとしても、ビジネスの可能性はかなり低い。
    その⼤きな理由は、現地メーカーのどの会社も革の納期が2〜3週間というのが当たり前になっており、日本からの物流の方法、納期が⼤きなネックとなる。
    これは価格の問題よりもはるかに⼤きな課題となっている。
  • 日本の革の存在がほとんど知られていないという点は⼤きな課題である。リネアペレなどの展⽰会に出展することはもちろんであるが、日本革の特徴やイメージを伝える⼿段を構築する必要があるということも⼤きなポイントである。
    とにかく知られていないということは、いくら優れた革であっても、企画検討の段階での机上にも上がらないということであるため、まずはそこからである。
    またこの要点は、単独のタンナーでできることではなく、団体、組織を持って検討していく必要があることは⾔うまでもない。
  • 日本の革に対しては訪問先のほとんどがその品質や技術の⾼さを認めている。
    実際のビジネスに即つながる話ではないにしても、予想以上の⽔準に興味を⽰すメーカーも少なくない。
    ただ、革素材がプレーンなタイプの素材だとすると、ほぼEU域内で調達する選択を彼らは⾏う。
    日本の革を選択するケースがあるとすれば、日本でしか得られない革(技法や仕上げが特有な革)や、日本でしか作れない革(機能性革や新素材など)しかない。
  • ビジネスとしての課題は多いが、海外事業という意識を残したうえで、常に情報を発信し続け、現地メーカーやエージェントなどとの協業や情報を得ながら、タイミングを得られた時点で体制を構築していくといったスタイルが、日本のタンナーが海外で事業を展開可能となる数少ない方策であると思われる。
戦略のポイント
  • 日本革の存在、特徴を知ってもらう
    海外の製品の生産・流通を請け負うメーカーやホールセーラーなどにはまず認知されていない。
    これだと革調達の決定権が生産側にある場合は日本革は現状だとノーチャンス。
    そのためにも海外有名展⽰会への出展はもちろん、その場でインパクトのあるプロモーションを仕掛けることが重要となる。
  • エージェント・パートナー企業の必要性
    海外で事業を⾏う場合、日本革を熟知していて現地の⾔語でしっかりと説明できるエージェントの存在は⽋かせない。
    そのエージェントに日本の革の情報を集結させておく必要がある。
  • 海外企業が考える「日本らしさ」の追求
    海外の⼈が思う「日本らしさ」は伝統とか古風とかの仕上げではなく、技術⼒である。
    つまり革に置き換えてみると、⽔を弾く革、色落ちしない革、夏でも使える革といった、日本の技術⼒を持ってすればこういった革も製造できるのではないかといった要望に⾒合う革を検討する必要がある。
  • 海外事業を⾏うための体制づくり
    日本国内タンナーのグループ化が海外事業の展開、日本革の特徴を海外に発信するためにも不可⽋な要点である。
    グループ化することで、体制づくりの費用面の負担も軽減され、またEUのクライアントの量的な対応や色々な素材バリエーションなどの幅広い対応への可能性も⾼まる。