こんにちは、Kajiです。
革靴の製法には種類があります。
製法によって革靴のデザインや特徴もまったく違ってくるのでおもしろいですね。
- そもそも革靴の製法とは?
- 革靴の製法にはどんな種類がある?
- グッドイヤーウェルト製法やマッケイ製法の違いや見分け方、特徴は?
こんな疑問が本記事で解決します。
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革靴の製法とは?
そもそも革靴の製法とはなにを指すのか。
曖昧になっている場合が多いのですが
『革靴の底付けの方法』を指します。

革靴ジャーナル
底付けとは
革靴のソール(底部)とアッパー(甲部)の取り付けです。
内羽根や外羽根、
ストレートチップやチャッカブーツなどのお話は別になってきます。
もし革靴の種類を知りたという方がいれば、
以下にまとめています。

革靴の製法の歴史
革靴の製法は機械化と戦争によって進化してきました。
1846年にイギリスのホーエ(Howe)がミシンを発明し、
手縫いをせずとも革靴のアッパーが作れるようになりました。
この流れは今も続いていて、
現在革靴のアッパーはすべてミシン縫いで作られています。
1858年にブレイク(Blake)が底を縫う機械を発明しましたが
手工製の靴屋から猛反対があり実用化まではいたりませんでした。
この機械をマッケイ(Mckay)が買い
改良を加えました。
これが今日のマッケイ製法になります。
南北戦争が起き軍用革靴の需要が増え、
大量生産が必要になりました。
そんな中、手工製靴屋では供給が足らずに
マッケイ機が活躍しました。
そんなマッケイ製法をさらに改良したのが
グッドイヤー(Goodyear)です。
グッドイヤーは細革を縫い付ける機械を発明し、
一連の革靴工程を機械化しました。
そして1875年にグッドイヤーウェルト製法が完成しました。
革靴の製法&種類の違いと特徴
種類1:グッドイヤーウェルト製法
グッドイヤーウェルト製法は、
中底の作り方に特徴があります。

グッドイヤー ウェルト製法_Moonstar
他の製法では中底は裁断したままですが、
グッドイヤーウェルト製法では細革を縫うためにリブを切り込んで起こすか
別のリブを貼り付けます。
中底を木型に仮止めしてアッパーを吊り込みます。
そしてアッパーと細革を中底のリブに縫い付けます。
製法の特徴
・高価
・重厚な印象
・丈夫で安定性がある
・履き心地が良い
・耐水性が良い
・ソール張替えが可能
・アメリカやイギリスの高級靴でみられる

グッドイヤーウェルト_Z-craft
グッドイヤーウェルト製法は工程が複雑で
製靴部品も多く高価になります。
そのためかっちりとしており重厚な印象で
丈夫で安定性があります。
また型崩れも起きにくく
履き心地が良いです。
地面から中底への縫い目がないため、
水が入ってくる心配もありません。
そしてソールの張替えが可能なので
修理を何回もできます。
グッドイヤーウェルト製法は
アメリカやイギリスの高級靴でよくみられます。
長年付き合う革靴として適した製法です。
見分け方
・コバが張り出している
・出し縫いが見える

グッドイヤー_Amazon
一般的にコバがでていて
出し縫いをがみえます。
しかしリブの作り方でコバを引っ込めることも可能なので
出し縫いが見えないこともあります。
種類2:マッケイ製法
マッケイ製法は、
アッパーと中底とソールを一緒に縫い付けます。

マッケイ_Moonstar
グッドイヤーウェルト製法とは違い細革が不要で、
吊り込んだアッパーと中底、表底を機械で通し縫いします。
製法の特徴
・構造が簡単
・軽い
・ソールの返りが良い(屈曲性がある)
・水が染み込みやすい
・糸が切れると底が剥がれる
・イタリアの高級靴でみられる

マッケイ_Z-craft
アッパー、中底、ソールを一緒に縫い付ける簡単な構造で、
非常に軽く、またソールは返りがよくなります。
しかし底縫いが表底から中底を通してるため
雨が降ったときには水が入ってきやすいです。
また底縫い糸が切れるとソールがそのまま剥がれるという欠点も持ちます。
このデメリットを補うためにまず接着剤でソールを貼り付けてから
縫い付けるという方法もあります。
マッケイ製法は
優美で軽快なイタリアの高級靴でよくみられます。
見分け方
・コバがでていない
・出し縫いがない
・中底面&ソールに縫い糸がみえる

マッケイ_マドラス
グッドイヤーウェルト製法とは違い、
細革が不要なのでコバが出ていなく出し縫いもありません。
またソールとアッパーを一緒に縫うため
革靴の内側にある中底面とソールに縫い糸がみえます。
しかし縫い糸を隠すために全敷を張ることもあります。
種類3:ハンドソーンウェルテッド製法
グッドイヤーウェルト製法が生まれる前の製法で、
すべて手縫いです。

ハンドソーン_UR
構造はグッドイヤーウェルト製法とほぼ同じですが、
中底のリブに違いがあります。
グッドイヤーウェルト製法は布製テープを接着してあるのに対し、
ハンドソーンウェルテッド製法は中底にドブを掘り起こしリブを作ります。
製法の特徴
・すべて手縫い
・高価
・柔軟性がある
・注文靴(ビスポーク)でみられる
ハンドソーンウェルテッド製法は他の製法と違い
すべてが手縫いなため手間がかかり高価になります。
布製のテープを使用しないため、
グッドイヤーウェルト製法では達成できなかった柔軟性もあります。
既製品もありますが、
少量生産で個人の足に合わせるビスポークで多くみられる製法です。
見分け方
ハンドソーンウェルテッド製法の見分け方は、
グッドイヤーウェルト製法と同じです。

ハンドソーン_ユニオンインペリアル
ハンドソーンウェルテッド製法の革靴には
製法名がきちんと記してあることがあるので
そこで判断できます。
種類4:オパンケ製法(オパンカ製法)
土踏まず部のソールをアッパーにかぶせるようにして縫い付ける製法です。

オパンケ_hudsonkutsuten
オパンカ製法とも呼ばれ、
ウーゴ&エンツォというブランドが取り入れたのが始まりです。
製法の特徴
・土踏まずにフィット感がある
・軽い
・ソールの返りが良い(屈曲性がある)
・マグナーニでよくみられる
土踏まず部のソールをアッパーにかぶせるため、
足裏の、特に土踏まず部分にはフィット感が生まれます。
また接着剤を使わない製法のため、
軽く屈曲性もあるとされています。
マグナーニの革靴でよくみかける製法です。
見分け方
・土踏まず部に縫い目がみえる

オパンケ_マグナーニ
土踏まずの外側部分には縫い目がみえます。
種類5:ノルウィージャン・ウェルト製法
グッドイヤーウェルト製法とはアッパーの処理が異なり、
外側に縫い目をだします。

ノルウィージャン_build-on-strength
防水のためにギザギザが特徴のL字型のウェルトを使用することが多いです。
製法の特徴
・堅牢
・耐久性&耐水性に優れる
・登山靴やスキー靴にみられる
ソールが二重になっており、
堅牢で耐久性&耐水性に優れます。
またその手硬い作りから
登山靴やスキー靴によくみられます。
見分け方
・ウェルトに二重の縫いがみえる

ノルウィージャン_アラウンドザシューズ
最大の特徴がウェルトの二重縫いで、
他の製法ではまず見られません。
種類6:セメント製法(セメンテッド製法)
セメント製法はセメンテッド製法とも呼ばれます。

セメント_Moonstar
吊り込んだアッパーとソールを接着剤で張り合わせる方法です。
中底を木型に仮止めし、
アッパーを吊り込んでから接着面を起毛した後に
接着剤を熱してプレスにかけて接着させます。
第二次世界大戦中に接着剤が飛躍的に進化し、
靴用として量産できるようになりました。
安価で大量生産ができるので、
今では一般靴の主流になっています。
製法の特徴
・構造が簡単
・安価
・ソール張替えができない

マッケイ_Z-craft
セメント製法(セメンテッド製法)は縫いの工程がなくシンプルな構造のため
大量生産が可能で安価です。
一方でソールの張替えができないため、
履きつぶすという感覚で購入することをおすすめします。
見分け方
・出し縫いがない
・中底面やソールに縫い糸がみえない

セメント_suit select
アッパーとソールを縫っていないので、
出し縫いがみえなく
中底面やソールにも縫い糸がありません。
種類7:ステッチダウン製法
ステッチダウン製法は、
アッパーを外側に吊り込んでからソールを貼り付け、
周辺を縫い付けます。

ステッチダウン_Moonstar
周辺に細革をつけながら出し縫いをする場合もあります。
製法の特徴
・軽い
・ソールの返りが良い(屈曲性がある)
・子供靴にみられる
・安価
吊り込みが簡単で中底を使っていないため、
軽く屈曲性があります。
子供靴として最適です。
またグッドイヤーウェルト製法やマッケイ製法に比べ
安価です。
見分け方
・出し縫いがみえる
・コバにアッパーとソールの断面が見える

ステッチダウン_Regal
アッパーとソールが外側で縫い付けられているので
出し縫いが見えます。
またコバにはアッパーとソールの断面をみることができます。
他の製法ではアッパーの断面がみえることはまずありません。
種類8:カリフォルニア製法
カリフォルニア製法は、
アッパーと中底、裾テープを1度または2度に分けて縫い合わせて袋状にした後、
巻き込むようにソールを貼り付けます。

カリフォルニア_Moonstar
その名の通り
アメリカのカリフォルニア州で100年ほど前に開発された製法です。
製法の特徴
・縫い糸が切れれば分離する
・軽い
・ソールの返りが良い(屈曲性がある)
・カジュアル靴にみられる

カリフォルニア_Z-craft
アッパーと中底、裾テープを一緒に縫うため、
縫い糸が切れれば分離してしまいます。
しかし中底には薄く柔らかい素材を使用するなど、
軽く屈曲性に富んでいます。
カジュアル靴として作られます。
見分け方
・プラットフォームがみえる

カリフォルニア_ハッシュパピー
巻き込んだ裾テープがプラットフォーム状になり
アッパーとソールの間にみることができます。
種類9:バルカナイズ製法
金型を使うのが特徴的な製法です。

バルカナイズ_Moonstar
ダイレクト・バルカナイズ製法とも呼ばれます。
吊り込みをしたアッパーに底金型をセットし、
未加硫のゴム片を金型に入れ、
加熱し加硫圧着しながら同時に本底を成型します。
スペインのチェマプロセスが発祥です。
製法の特徴
・ソールが剥がれない
・型くずれが少ない
・グッドイヤーウェルト製法やマッケイ製法に似せることができる
・作業靴や安全靴にみられる

バルカナイズ_Z-craft
セメント製法(セメンテッド製法)では
接着剤を使いますが、バルカナイズ製法では
ゴムを加硫しながら圧着します。
そのため接着強度が強くソールが剥がれる心配がありません。
また金型を使うため型崩れが少なく、
金型の作り方によってグッドイヤーウェルト製法やマッケイ製法のどちらにも似せることができます。
作業靴や安全靴の製法としてよくみられます。
見分け方
・底が合成ゴム
・コバのつま先とヒール後部に金型の合わせ目がみえる

バルカナイズ_jil-sander
ソールは合成ゴムで、
コバのつま先とヒール後部には金型の合わせ目がみえます。
種類10:インジェクション製法
吊り込みをしたアッパーに底金型をセットし、
液状の合成樹脂を金型に入れ、加熱接着します。

インジェクション_Moonstar
バルカナイズ製法の発展系で、
液状の合成樹脂を使用するのがポイントです。
ポリウレタンゴムの原料を注入して
底付けをするようになってから
急速にインジェクション製法が市場へと出回りました。
製法の特徴
・ソールが剥がれない
・耐久性がある
・耐水性がある
接着強度が大きいため、
ソールが剥がれる心配はありません。
また、ポリウレタン系ゴムを使うため
耐久性と耐水性にも優れます。
見分け方
・コバのつま先とヒール後部に金型の合わせ目がみえる
・底が2色以上合成ゴム
・スポーツ用ランニングシューズにみられる

インジェクション_Moonstar
金型を使いソール成形しながら靴に付ける点で
バルカナイズ製法と同じです。
そのためバルカナイズ製法の靴と見分けるのは難しいですが、
インジェクション製法は原液の着色が自由にできるため、
2色以上使っているソールであればインジェクション製法といえます。
スポーツ用のジョギング&ランニングシューズによくみられます。