皮革産業の市場規模は?日本とイタリアを比べると?コロナでどうなった?

レザー業界ニュース

こんにちは、Kajiです。

今回は皮革産業全体について書いていこうと思います。

皮革産業の市場規模は?

【日本】皮革産業の市場規模

日本の皮革産業の市場規模は
2021年時点のデータで約1,100億円です。

 

付加価値額としての数字ですが、
なかなかイメージがわきにくいので他産業の例を挙げてみます。

 

製糸や化学繊維工業など、
糸産業の市場規模が1兆円以上です。

 

他には糖類を作る
砂糖産業の市場規模が約1,400億円であることを考えると
皮革産業がどれほどの市場規模かが分かります。

 

経済産業省の産業別統計表がありますので、
データをそのまま持ってきました。

 

産業分類2,000番の付加価値額114,255(百万円)が
皮革産業の市場規模です。

産 業 分 類 事業所数 従業者数 現金給与

総  額

原 材 料

使用額等

製 造 品

出荷額等

付加価値額

(従業者29人

以下は粗付

加価値額)

    年次   (人) (百万円) (百万円) (百万円) (百万円)
2000 なめし革・同製品・毛皮製造業 2019 1,057 19,483 58,315 199,411 325,618 114,255
2010 なめし革製造業 2019 138 1,811 6,866 23,836 40,867 15,199
2011 なめし革製造業 2019 138 1,811 6,866 23,836 40,867 15,199
2020 工業用革製品製造業(手袋を除く) 2019 27 1,386 4,494 30,295 39,677 8,107
2021 工業用革製品製造業(手袋を除く) 2019 27 1,386 4,494 30,295 39,677 8,107
2030 革製履物用材料・同附属品製造業 2019 89 1,082 2,444 5,230 8,668 3,137
2031 革製履物用材料・同附属品製造業 2019 89 1,082 2,444 5,230 8,668 3,137
2040 革製履物製造業 2019 221 4,826 14,918 55,397 86,359 28,266
2041 革製履物製造業 2019 221 4,826 14,918 55,397 86,359 28,266
2050 革製手袋製造業 2019 16 360 X X X X
2051 革製手袋製造業 2019 16 360 X X X X
2060 かばん製造業 2019 227 5,003 13,743 35,370 66,124 27,988
2061 かばん製造業 2019 227 5,003 13,743 35,370 66,124 27,988
2070 袋物製造業 2019 277 3,906 11,115 32,838 58,070 22,945
2071 袋物製造業(ハンドバッグを除く) 2019 185 2,707 8,381 23,713 42,381 16,928
2072 ハンドバッグ製造業 2019 92 1,199 2,734 9,125 15,690 6,017
2080 毛皮製造業 2019 1 9 X X X X
2081 毛皮製造業 2019 1 9 X X X X
2090 その他のなめし革製品製造業 2019 61 1,100 3,638 11,603 17,804 5,667
2099 その他のなめし革製品製造業 2019 61 1,100 3,638 11,603 17,804 5,667

事業所数は1,057、従業員数は19,483人であることがわかります。

 

全国の皮革産業の事業所数と事業者数も同データに載っていたので
引用します。

産業分類

都道府県

事業所数 従業者数 現金給与

総  額

原 材 料

使用額等

製 造 品

出荷額等

付加価値額

(従業者29人

以下は粗付

加価値額)

        年次   (人) (百万円) (百万円) (百万円) (百万円)
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 00 全国計 2019 1,057 19,483 58,315 199,411 325,618 114,255
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 01 北海道 2019 13 520 1,706 3,755 6,995 2,837
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 02 青森県 2019 *** *** *** *** *** ***
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 03 岩手県 2019 15 470 1,312 6,389 8,475 1,919
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 04 宮城県 2019 4 136 397 689 1,344 581
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 05 秋田県 2019 38 496 929 648 2,145 1,380
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 06 山形県 2019 26 998 3,591 10,629 19,627 7,750
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 07 福島県 2019 31 970 2,295 8,758 14,999 5,541
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 08 茨城県 2019 22 252 609 1,104 2,444 1,217
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 09 栃木県 2019 10 180 479 1,381 2,217 611
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 10 群馬県 2019 3 46 155 447 688 221
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 11 埼玉県 2019 68 1,105 2,971 8,997 13,814 4,504
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 12 千葉県 2019 45 762 2,303 7,131 11,440 3,895
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 13 東京都 2019 208 3,376 11,329 36,920 61,375 23,183
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 14 神奈川県 2019 5 146 494 6,729 8,616 1,617
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 15 新潟県 2019 11 226 607 1,464 2,522 919
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 16 富山県 2019 4 163 583 1,748 3,001 1,118
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 17 石川県 2019 3 41 124 192 400 191
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 18 福井県 2019 3 62 X X X X
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 19 山梨県 2019 6 116 336 1,822 3,268 1,131
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 20 長野県 2019 12 332 789 1,466 2,935 1,173
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 21 岐阜県 2019 7 59 113 105 283 166
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 22 静岡県 2019 11 287 1,203 5,198 7,716 2,289
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 23 愛知県 2019 35 950 3,159 18,232 24,427 5,535
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 24 三重県 2019 *** *** *** *** *** ***
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 25 滋賀県 2019 7 76 129 174 427 233
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 26 京都府 2019 30 573 1,746 4,144 8,960 4,375
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 27 大阪府 2019 130 1,556 4,710 11,908 22,040 9,310
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 28 兵庫県 2019 220 3,372 9,538 33,075 55,952 20,539
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 29 奈良県 2019 16 293 931 3,039 5,546 2,287
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 30 和歌山県 2019 8 94 291 497 1,056 498
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 31 鳥取県 2019 2 39 X X X X
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 32 島根県 2019 3 80 244 399 870 433
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 33 岡山県 2019 8 188 561 880 1,829 871
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 34 広島県 2019 4 194 577 2,390 3,542 1,123
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 35 山口県 2019 *** *** *** *** *** ***
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 36 徳島県 2019 3 41 102 37 226 175
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 37 香川県 2019 17 396 1,129 4,028 6,840 2,589
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 38 愛媛県 2019 1 48 X X X X
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 39 高知県 2019 1 89 X X X X
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 40 福岡県 2019 10 180 607 1,884 3,174 1,171
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 41 佐賀県 2019 6 394 1,125 8,093 9,731 1,422
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 42 長崎県 2019 1 6 X X X X
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 43 熊本県 2019 1 41 X X X X
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 44 大分県 2019 5 99 313 2,772 3,177 321
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 45 宮崎県 2019 *** *** *** *** *** ***
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 46 鹿児島県 2019 1 12 X X X X
20 なめし革・同製品・毛皮製造業 47 沖縄県 2019 3 19 X X X X

 

【イタリア】皮革産業の市場規模

世界の皮革産業についてはどうでしょうか?

もっとも皮革産業が盛んなイタリアをみてみます。

 

2014年時点で、
イタリア皮革産業の市場規模は約2,600億円です。

 

日本の2倍以上です。

事業所は20,000以上もあります。

 

野村総合研究所のレポートより数字は拝借しました。

https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_11249287_po_E004197.pdf?contentNo=1&alternativeNo=

皮革産業の市場規模まとめ

日本とイタリアの皮革産業の市場規模を比べてきました。

皮革産業の市場規模と事業所数を
まとめた比較表はこのようになります。

 

市場規模 事業所数
日本 1,100億円 1,057
イタリア 2,600億円 20,000以上

 

皮革産業の現状

皮革産業の現状については、
様々な機関からレポートがでています。

 

以下資料より引用します。

https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_11249287_po_E004197.pdf?contentNo=1&alternativeNo=
http://www.tcj.jibasan.or.jp/outline/disclosure/hokokusyo/R1-jyohosyusyu

・皮革産業に属する業種は規模の小さな企業によって構成されている。

・他の製造業と比較しても 1 事業所あたりの生産額、従業員数は最も少ない。

・従業員 1 人あたり生産額や賃金は繊維工業に次いで低い。

・規模が大きくなっても、必ずしも生産性・収益性が改善されるわけではない。

・過去 15 年の間も、事業所数は約 6 割減、生産額は約 5 割減となるなど、産業として急速に縮小を続けている。
この間、1 事業所あたりの生産額には大きな変化がなく、大型化が進んでいるともいえない。

・過去 10 年の間、皮革産業は国内生産額の縮小幅と輸入額の拡大幅がほぼ同様で、皮革製品の市場規模自体には大きな変化はない。
国内生産の減少を輸入で補う、もしくは、輸入の増加におされて国内生産が減少していると推測される。

・なめし革製造に関する国内市場は急激に減少しており、海外の革を使い、海外で生産された革製品に国内製品が押されていることが顕著に現れている。

・業界として非常に厳しい状況にある。

・産業として過渡期を迎えている製革産業及び皮革産業は、産業の弱体化が進むに連れて周辺環境の変化による影響をより受けやすい状態になっている。
ましてや現在の日本は少子⾼齢化により、全体のマーケットが縮小しており、周辺環境の影響により劇的に変わってしまう可能性は否定できない。

皮革産業はコロナでどうなった?

市場規模が縮小している皮革産業ですが、
コロナでさらに厳しい状況に立たされています。

 

新型コロナウイルスの影響で、
靴や家具などの需要が激減し、
原皮の値段が下がり続けています。

 

牛原皮の5割、豚原皮の8割以上が海外へ輸出されていますが、
需要が減少しています。

 

食品産業新聞社の記事にはこのように書かれています。

東京芝浦原皮協同組合によると、牛の塩蔵原皮の加工処理・輸出には1枚当たり2,500~3,000円、豚塩蔵原皮は300円のコストがかかるため、現状では加工処理するほど赤字が生じている状況で、林理事長は「牛原皮は引取価格が0円であっても採算が合わない状態にあり、今後、廃業する事業者が出てくる恐れもある。未曽有の危機的状況にある」と厳しい現状を切実に訴える。

さらに、「いま日本の皮革製品のうち、原料から最終製品に至るまで国内で製造しているところはほぼ皆無に近く、ほとんどが一度、原皮を輸出し、東南アジアなどのなめし業者で処理されたうえで皮革を輸入している。それが新型コロナで寸断され、その影響が出ている。食肉と違い、原皮の場合は赤字が出ても引き受けざるを得ない。それがいま経営に重く響いている」と説明する。

日本畜産副産物協会の垣内利彦副会長も「我々原皮業界は、と畜解体を止めることがあってはならないと使命感で仕事をしている。それでもかなりの赤字を出しながら事業を継続している」と訴える。東京芝浦原皮協同組合の中根勇専務理事は、「原皮の保管・処理の一部分に助成措置を行うのではなく、国産皮革製品の消費を促進するなど、国内の皮革産業全体の振興に力を入れてもらいたい」と抜本的な対策・支援の必要性を指摘している。

皮革産業の未来

皮革産業の未来について、
主に今後の対策を機関レポートがまとめています。

海外に打って出るという施策です。

皮革産業の現状と課題

・皮革産業が競争力を獲得し販路拡大を目指す場合、日本製皮革の良さをある程度客観的にアピールする必要がある。
1つの取組として、日本タンナーズ協会が行っている「ジャパン・レザー・プライド」がある。
この取組は、日本国内で生産された天然皮革素材のイメージアップを目指すもので、①日本国内で生産する製革業者が「原皮」等から生産した革を 100%使用していること、②異素材との併用は可とするが、革素材の使用比率は表面積の 60%以上であること、③革製品は日本国内で製造されていること、これらの条件をクリアした場合に商標登録したロゴマークを最終製品にタグ付けし、消費者に日本製をアピールするものである。

http://www.tcj.jibasan.or.jp/outline/disclosure/hokokusyo/R1-jyohosyusyu

・日本革の存在、特徴を知ってもらう
海外の製品の生産・流通を請け負うメーカーやホールセーラーなどにはまず認知されていない。

これだと革調達の決定権が生産側にある場合は日本革は現状だとノーチャンス。

そのためにも海外有名展⽰会への出展はもちろん、その場でインパクトのあるプロモーションを仕掛けることが重要となる。

・エージェント・パートナー企業の必要性

海外で事業を⾏う場合、日本革を熟知していて現地の⾔語でしっかりと説明できるエージェントの存在は⽋かせない。

そのエージェントに日本の革の情報を集結させておく必要がある。

・海外企業が考える「日本らしさ」の追求

海外の⼈が思う「日本らしさ」は伝統とか古風とかの仕上げではなく、技術⼒である。

つまり革に置き換えてみると、⽔を弾く革、色落ちしない革、夏でも使える革といった、日本の技術⼒を持ってすればこういった革も製造できるのではないかといった要望に⾒合う革を検討する必要がある。

・海外事業を⾏うための体制づくり

日本国内タンナーのグループ化が海外事業の展開、日本革の特徴を海外に発信するためにも不可⽋な要点である。

グループ化することで、体制づくりの費用面の負担も軽減され、またEUのクライアントの量的な対応や色々な素材バリエーションなどの幅広い対応への可能性も⾼まる。

イタリアの良いお手本を学びビジネスモデルを再構築する必要があるとのレポートもあります。

https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_11249287_po_E004197.pdf?contentNo=1&alternativeNo=

イタリアではメーカー(特に、ファッションメーカー)とタンナーが密にコミュニケーションを取っている。メーカーからのニーズを受け、タンナーが商品開発にチャレンジしている。メーカーとタンナーは対等の立場、パートナーという関係。

①製品メーカーによる直販モデル
タンナーと製品メーカーの直取引モデル
②国内タンナー×国内製品メーカーの直取引型
③国内タンナー×国外製品メーカーの直取引型
④国外タンナー×国内製品メーカーの直取引型
⑤イタリアン・ブランド型
⑥ブランド・タンナー買収型

ブランド開発モデル
⑦卸プライベートブランド型
⑧小売プライベートブランド型
⑨タンナープライベートブランド型
⑩他国ブランド OEM モデル