こんにちは、KAJIです。
ここ数年サステナブルが叫ばれ、
ビジネスではサステナブルであることが前提になってきました。
レザー業界も例外ではなく、
サステナブルで環境を守っていかなければなりません。
- レザーや皮革産業は環境問題を引き起こしている?
- サステナブルなレザーはある?レザーはサステナブルになれるのか?
レザーの環境への現状を踏まえつつ、
今後のサステナブルなレザー業界を展望していきます。
レザーの地球環境への影響は?環境問題を引き起こしている?
なめし(鞣し)の環境への影響は?
動物の『皮』を『革』へ変化させるには、
なめす作業が必要です。
日本タンナーズ協会では以下のようになめしの定義がされています。
動物の皮は、柔軟性に富み非常に丈夫ですがそのまま使用するとすぐに腐敗したり、乾燥すると板のように硬くなり柔軟性がなくなります。この大きな欠点を樹液や種々の薬品を使ってこの欠点を取り除く方法が「鞣し」と言います。鞣していない状態を「皮」と呼び、鞣したものを「革」と呼び区別しています。
また、なめしには大きく分けて2種類あります。
タンニン鞣し
タンニンを含んでいる植物は多数ありますが現在、使われているのは、南アフリカ産のミモザから抽出したワットルエキス、南米のケブラチヨから抽出したケブラチョエキス、欧州のチェスナットから抽出したチェスナットエキスでこれを単独で使用したり、混合して使用し「鞣し」を行っています。鞣された革は、伸縮性が小さく、堅牢なのでケース、鞄、靴底など立体化する革製品に適しています。
クロム鞣し
金属鞣しの一つで鞣し剤に塩基性硫酸クロム塩を使用します。この方法が最も多く用いられています。特性は、柔軟性があり伸びが大きく弾力があります。しかも耐熱性があり靴の甲革、袋物、服飾用など利用範囲が広い。植物タンニン革に比べ鞣し剤の結合量が少ないので軽く、吸湿性も大きい。
革を作るにあたって不可欠な
『なめし(鞣し)』は環境問題を引き起こすほどの工程なのでしょうか?
大量の水を使用
革を1kgを生産するには、
なめす過程で水を17,000リットルも使います。
発がん性
なめしには『タンニン』と『クロム』の2種類がありました。
クロムなめしを使ったレザーを焼却すると、
発がん性があり、人体への悪影響が確認されています。
水質汚濁
クロムでのなめし工程には化学製品が使われ、
特にインドや中国では使用された水がそのまま河川に流れ込み、
水への影響も報告されています。
また工場排水には重金属が含まれるため、
農作物へ影響があります。
2014年にはジャーナリストのショーン・ギャラガーが
インドの皮革産業が環境問題を引き起こしたことを記録したドキュメンタリーを公開しました。
児童労働
2012年にバングラデシュで強制児童労働が問題となりました。

AP Photo / A.M. Ahad
ヒューマン・ライツ・ウォッチがレポートをまとめているので引用します。
バングラデシュにある革なめし工場のうち90%が、ハザーリバーグに密集しているとみられる。政府当局者は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、ハザーリバーグの革なめし工場に対しては環境法や労働法を適用していないと述べた。ハザーリバーグの革なめし工場で働く労働者は、最大で15,000人とみられる。
革なめし工場で働く子どもたち(11歳くらいの子どもも児童労働をしている)からも聞き取り調査をした。子どもたちも、化学物質に革を浸す、カミソリの刃でなめした革を切る、危険な革なめし用機械を使う、などの危険な仕事に携わっていた。女性や少女は、男性より賃金が低く、自分たちの仕事に加えて、通常男性がする仕事もやらされている、と訴えた。
動物虐待でレザーを入手?
書くだけでも恐ろしいですが、
きつねや犬などの皮を生きたまま剥ぐ動画が一部で拡散されたことにより、
動物虐待によって原皮が供給されているとのイメージがレザー業界についてしまいました。
後述しますが、
レザーは食肉の副産物ですので動物虐待から成り立つ産業ではありません。
レザーは実はサステナブル?
長寿&再利用
本革には10年以上の寿命があり、
修理や手入れを続ければさらに使うことが出来ます。
(ちなみに人工皮革の寿命は3年ほど)
他の繊維素材と比べると圧倒的に耐久性があります。
サーキュラー・エコノミー(循環型経済)を担う素材としては最適で、
サステナブルな活躍が期待されています。
サーキュラー・エコノミー(循環型経済)の対義語はリニアエコノミーで、
消費された資源をリサイクル・再利用することなく直線的に廃棄する経済のことを言います。
わかりやすい図があったのでお借りしました。

株式会社トランスより
食肉の副産物
意外と知られていない事実なのですが、
皮革は食肉のために屠殺された牛や馬の副産物です。
環境問題であがっていた
動物虐待はありえません。
さらに原皮は肉に比べて価格が安いため、
原皮目的で畜産をする理由がないです。
肉の価格が牛1頭で数十万円~数百万円なのに対し、
原皮は1枚1,000円以下です。
レザー業界のサステナブルな活動
一般社団法人 やさしい革
クロムでのなめしが環境と人体に影響を及ぼすことから、
すべて植物タンニンなめしで作られているのがラセッテーレザーです。

ラセッテーショップより
以下公式サイトからの引用です。
クツやバッグなどで使われる本革は、そのほとんどがクロムなど重金属系の工業薬品を使って作られています。 しかし毒性が強い“六価クロム”が革製品から 検出されることもあります。 そこで私たちは、自然界から抽出した植物タンニンを使用し、大量生産も可能で実用的に使える皮革素材の開発に着手しました。
そして完成したのが、ミモザアカシアなどから抽出される天然成分の植物タンニンを主原料とする「やさしい革」<RUSSETY LEATHER®(ラセッテーレザー)>です。
私たちの想いは、革……すなわち動物皮を大切に使い、その後は、安全に地球に還すこと。 そんな、「やさしさ」に包まれた消費文化を育て、自然と共存しながら明るい未来につなげていく取り組みを行っています。
クロムなめし廃止の他にも、
『動物のストレスゼロ』『働く人のストレスゼロ』『不公平な取引ゼロ』など、
サステナブルの見本となるような活動です。
筆者はラセッテーレザーに実際触れたことがありますが、
驚くほど柔らかな仕上がりでした。
MATAGIプロジェクト
シカやイノシシは時に獣害駆除されます。
食肉として活用されているのは20%程度ですが、
皮はそのうち0.2%しか活用されず、ほとんどが廃棄されています。
廃棄されている皮を有効活用し、
産地の活性化を目指すのがMATAGIプロジェクトです。
以下公式サイトより引用です。
MATAGIプロジェクトでは、お預かりした獣皮を靴やバッグなどに使えるように獣革=皮革素材にして、産地に還します。すなわち、加工賃と事務費用(送料・税別途)のみで還すことで、産地負担を軽減し、産地に最大限の収益を発生させることを目的としています。そのため、当プロジェクト自体で獣革の仲介販売マージンを頂くことはありません。一方、獣革による収益事業を目指すための支援策を講じ、産地が直接的に獣革を活用出来るような展示販売会や連携事業を推進しています。
実物の獣皮を使用し、皮を剥ぐ工程から獣革にするための必要な処理方法、また鞣し工場に送る場合の注意点や送り出すまでの保管方法を実地で学ぶことが出来ます。さらに鞣し工場見学会を開催し、他の動物革との違いや皮革の基礎知識も身に付けることが出来ます。
日本エコレザー基準認定事業
環境に配慮した天然皮革である『エコレザー』の基準を作っています。
エコレザーについての引用です。
「日本エコレザー基準(JES)」に適合し、「製品の製造・輸送・販売・再利用」までの一連のライフサイクルのなかで、環境負荷を減らすことに配慮し、環境面への影響が少ないと認められる革材料のことを指しています。
また、JESラベルの認定対象は「皮膚断面繊維構造を損なわない革」に限られ、再利用においても革の機能を損なわないことが大前提とされています。
日本エコレザー基準(JES)の主な認定要件は下記の3つです。
1.天然皮革であること。
2.排水、廃棄物処理が適正に管理された工場で製造された革であること。
3.臭気、化学物質(ホルムアルデヒド・重金属・PCP・禁止アゾ染料・発がん性染料の使用制限)および染色摩擦堅ろう度に関する一定の基準を満たしていること。
エコレザーの認定を受けることはもちろんサステナブルな活動を意味し、
消費者にとっても信頼のあるものとなります。
ビジネスレザーファクトリー
強制児童労働やクロムでの水質汚濁が問題となったバングラデシュで
現地の人を正当な対価で雇いレザーアイテムを生産しています。
公式サイトより引用です。
日本の約4割の国土に、約1億6千万人が暮らすバングラデシュでは、世界でも有数の人口密度の高さから、失業率が大きな社会問題となっています。厳しい就労環境のもと、未経験や未就学を理由に「働く」場のない人々も多く存在しています。
私たちは、バングラデシュに1人でも多くの雇用をつくるために、これまで働くことの出来なかった、厳しい家庭環境で暮らす方々や、女性を積極的に採用し、現地資源を活用した牛革製品の工場を設立しました。
サステナブルな企業ですが高品質、
かつ低価格のため人気のあるブランドとなっています。
サステナブルな企業がビジネスとしても成功できる良い例です。
サステナブルなレザーの種類
動物の皮革に代わり、
サステナブルなレザーが生み出されています。
サステナブルなレザーは、
ヴィーガンレザーとも呼ばれます。
(厳密にはヴィーガンレザーにフェイクレザーや人工皮革も含まれますが、本記事では「天然素材を使った」動物性以外の皮革に限ったレザーを紹介します)
マッシュルームレザー
キノコの菌糸体を培養して作るレザーです。

TABI LABO
週単位での収穫が可能で、
エルメスやダブレット(DOUBLET)との協業が話題を集めています。
サボテンレザー
なめし工程での最大の課題である
大量の水の使用を解決したレザーです。

senken
水分をほとんど使用せず生産でき、
ロサンゼルスのスニーカーブランド「クレイ」などが製品に使用しています。
プラントレザー
ユーカリの木や植物油、天然ゴムなど、
100%植物由来の素材です。

wwdjapan
従来の天然⽪⾰に⽐べ1/40、⽯油由来の合成⽪⾰と⽐べても1/17もカーボンインパクト(⼆酸化炭素による環境への影響)を軽減することに成功しています。
サステナブルなレザーの課題
サステナブルなレザーには、
発展途上なこともあり課題があります。
完全ヴィーガンとは言い切れない素材
ヴィーガンと謳っているが、
未だ多くの合成繊維を含むため完全にヴィーガンではないです。
つまり石油由来の素材も使用しているため、
100%エコであるとは言い切れないです。
高価格
新素材のため市場への流通が少なく、
価格はまだ本革と同等程度になっています。
高価格なので、
だったら本革を選択する、という消費者が多いのが現状です。
牛や豚レザーは使い勝手がよく耐久性もあり、
素晴らしい素材です。
(筆者も大好きです)
そのためファンも多く、
ヴィーガンレザーなどに代替するには課題もあるので
まだ本革が有利かなと思いました。
最後までお読みいただきありがとうございました!