サーキュラー・エコノミーとは?ファッション業界ビジネス事例&皮革産業の取り組み

サーキュラー・エコノミーとは?ビジネス事例&皮革産業の取り組み サステナブル
GUCCI(グッチ)

こんにちは、Kajiです。

サステナブルな社会が加速し、
レザー業界もサステナビリティが求められるようになりました。

そんな中で注目されているのが
サーキュラー・エコノミー』という考え方です。

サーキュラー・エコノミーとは?

サーキュラー・エコノミーとは
循環型経済のことです。

修理やリユースで消費者が長期間製品を活用したり、
製品を分解して新しい製品や素材の一部としたりするなど、
循環利用を促進する考え方です。

ヴィーガンレザーとは?素材や合皮との違い、日本製はある?製品やブランドも紹介

結果として廃棄物や有限な資源利用をおさえることができます。

環境に優しいだけでなく、
持続可能な経済成長や新たな雇用の創出も見据えた産業モデルです。

従来の経済はリニア(直線)経済と呼ばれ、
「Take(資源を採掘して)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」という流れで終わっていました。

そこで「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」と捉え、
廃棄物を出すことなく資源を循環させる経済の仕組みであるサーキュラー・エコノミーが登場しました。

サーキュラー・エコノミーとは?ビジネス事例&皮革産業の取り組み

TRANS

サーキュラー・エコノミーは
Reduce(減らす)」「Reuse(再利用する)」「Recycle(リサイクル)」の3Rの考え方とは違い
原材料調達・製品デザイン(設計)の段階から回収・資源の再利用を前提としています。

経済産業省と環境省のレポートにも定義されているので引用します。

http://www.env.go.jp/recycle/mat02.pdf

・循環経済とは、従来の「大量生産・大量消費・大量廃棄」のリニアな経済(線形経済)に代わる、
製品と資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小化した経済を指す。

これは、循環型社会に向けて我が国が推進してきた従来の3Rを、シェアリングやサブスクリプション
といった循環性と収益性を両立する新しいビジネスモデルの広がりも踏まえ、持続可能な経済活動
として捉え直したもの。

サーキュラー・エコノミーとは?ビジネス事例&皮革産業の取り組み

経済産業省&環境省

サーキュラー・エコノミーの3原則(エレン・マッカーサー財団)より

サーキュラー・エコノミーを推進するのが
エレン・マッカーサー財団です。

マッカーサー財団ではサーキュラー・エコノミーの3原則を掲げています。

①自然のシステムを再生(Regenerate natural systems)

有限な資源ストックを制御し、
再生可能な資源フローの中で収支を合わせることにより、自然資本を保存・増加させる。

②製品と原料材を捨てずに使い続ける(Keep products and materials in use)

技術面、生物面の両方において製品や部品、
素材を常に最大限に利用可能な範囲で循環させることで資源からの生産を最適化する。

③ゴミ・汚染を出さない設計(Design out waste and pollution)

負の外部性を明らかにし、排除する設計にすることによってシステムの効率性を高める。

 

Vogueではエレン・マッカーサー財団の行動8箇条をまとめています。

エレン・マッカーサー財団に聞いた、ファッションをよりサステナブルに楽しむための8カ条。
よりサステナブルなファッションの消費のために、今私たちが気をつけるべきこと、取るべきアクションとは何だろう? 循環型経済を推進するエレン・マッカーサー財団の“Make Fashion Circular”プロジェクト・マネジャーを務めるローラ・バーモンドとともに、8つの心得をまとめた。

1. まずは寿命をまっとうさせること。

環境に配慮してファッションを楽しむために何より重要なのは、商品寿命をまっとうさせる努力と工夫を惜しまないこと。新しい商品を買う際には、それがファストファッションであれラグジュアリーブランドであれ、まずは以下を検討しよう。1つ目は、汚れたり壊れたりしてもリペアするに耐えうる質かどうか。2つ目は、トレンドの変化はファッションにつきものとして、そのときに例えばシルエットを作り替えるなどリメイクすることができる質と設計であるか。そして3つ目は、自分で着なくなったあとに再販したり寄付することができるかどうか。再販業者の中には、特定のブランドやカテゴリーは受け付けていない場合もある。サステナブルな素材や製法かを考えるのは、その次だ。

2. 「買う」以外の選択肢もある。

1で述べた基準は、あくまで自分自身で商品を実際に「買う」ときに適用されるものだ。しかし現在のように、シェアリングエコノミーが発展した世界には、「買う」以外の選択肢が多数あることを忘れないようにしよう。その代表例が、ファッションのレンタルサービスだ。もし、何度も繰り返し着る可能性が低い服やバッグ、アクセサリーであれば、購入する前にレンタルで対応できるか否かを調べてみよう。地球上には、数回しか、あるいは全く着られることなく廃棄される服が無数にある。スタイルの変化を頻繁に楽しみたいと思っている人や、まだ自分に似合うものがわからず実験中という人であればなおのこと、レンタルは環境に配慮しながらファッションのクリエイティビティを自由に楽しむための有効手段だ。

3. ワードローブを整理整頓しよう。

ワードローブを確認せずに新しい服を買ったら、あとから似たようなアイテムが出てきてがっかり……などという経験はないだろうか。つまり、ぎゅうぎゅうに服やバッグが詰まったワードローブでは、ファッションを自分らしく楽しむ機会も半減してしまうというわけだ。自然環境に配慮した消費を心がけたいと思うならば、買ったりレンタルする前に、まずは自分のワードローブと向き合おう。そして、忘れ去っていた過去のお気に入りが発掘された暁には、それらを並べ、再び着たいか、リペアしたり染め直すなど手を加えれば着られそうか、あるいは手放すかを考えよう。もし手放すと決めた場合でも、捨ててはいけない。再販できるクオリティかをチェックして、そうでない場合は、回収ボックスに持ち込むか寄付しよう。

4. 「捨てる」という選択肢は(原則)ない。

1や3で述べたように、基本的に、ほとんどの場合において私たちに「捨てる」という選択肢はないことを肝に銘じておこう。こんな汚れた服を回収ボックスに入れては失礼にあたるのでは、という心配も無用。エレン・マッカーサー財団の調査によると、回収された服の5〜10%は再販され、40〜60%は古着として途上国に輸出される。残りの大半は断裁されて家具の建材や中綿に活用されたり、重工業用の雑巾になる。焼却されたり埋め立てられるのはわずか1%ほど。しかし近い未来、ケミカルリサイクル技術(素材を化学的に分解して再資源化すること)がさらに進化すれば、これまでリサイクル不可能と言われていたものでも、再資源化して新たなモノに再生できるようになるはずだ。

5. 現時点で再生不可能なものも。

捨てるべからず、とはいえ、現時点ではリサイクル/リユースできないアイテムがあることも事実だ。例えばレザーシューズは、補修すればより長く使えるものの、リサイクルすることが技術的に不可能であることが多い。靴は一般的に、素材の異なる多数のパーツからできており、複雑な構造だ。しかもパーツの大半は強力な接着剤でつけられているため、パーツ単位ではリサイクル可能(あるいは生分解性の素材)でも、解体できなければ捨てざるを得ない。一方、完全に単一素材でできた靴(一体成型の長靴など)や接着剤不使用のものは、リサイクルできる可能性もある。トリッキーなアイテムであるだけに、購入の際にはどのような構造/素材で作られているかの確認を忘れずに。

6. 有害な化学薬品について知ろう。

極端な例だが、例えばオーガニックコットンにPFCsの一種であるパーフルオロ化合物を用いて撥水加工を施す、あるいは倫理的に調達された皮革を六価クロムやホルムアルデヒドを使ってなめせば、もはや環境にも人体にもいい素材ではなくなる。真にサステナブルにファッションを楽しむためには、素材の持続可能性だけでなく加工についても目を向ける必要があるのだ。残念ながら、私たち消費者がこうした加工に使用される化学薬品が有害か否かを調べる術はあまり多くないが、「Zero Discharge Hazardous Chemicals」や「Greenpeace Detox Fashion」といった団体が情報提供をしているほか、有害な化学薬品撲滅のための取り組みを行っているので、気になる人はサイトをチェックしてみよう。

7. エコな素材=環境にいい、わけでもない。

エレン・マッカーサー財団が重要と考える循環型ファッションの3原則は、1.廃棄や汚染を出さないデザインの考案、2.商品や素材を廃棄せず使い続けること、3.自然システムの再生だ。その中で私たち消費者が今すぐ実践できるのは、やはり2。サステナブルファッションと聞くと、とかく素材に注目しがちだが、たとえリサイクル素材やエコレザーが用いられていても、長い使用に耐えられる品質・設計でなければ意味があるとは言い難いのだ。現在の技術では、確かに再生素材はヴァージン素材に比べて耐久性が劣る場合が多いのも事実だが、今後のさらなる技術革新によって、より堅牢な再生素材が誕生することを楽しみに、今はとにかく長く商品を使い続けることを心がけよう。

8. 正しいケアとメンテナンスを。

最後に、より長くアイテムを使い続けるために不可欠な手入れについても触れておこう。たとえ丈夫な素材を用いた普遍的なデザインのものでも、ずさんな使い方やメンテナンスを繰り返せば、商品寿命が縮むのは想像に難くないだろう。そのためにも、商品を提供するブランドや企業は今後、手入れの方法をより詳細に消費者に伝える必要がある。一方で、どんなファッションアイテムにも共通するもっともシンプルで持続可能なメンテナンス方法は、なるべく洗濯回数を減らすこと。その際に、高温の水で洗わないよう注意し、乾燥機の使用も極力控えること。6の化学薬品の箇所でも触れた撥水加工に広く用いられるPFCsは、洗濯によって最終的に海に流れ着き、海洋生物の命を脅かすことがわかっている。

サーキュラー・エコノミーの市場規模は?

ビジネスがサーキュラー・エコノミーに移行することで、
莫大な経済価値が見込まれています。

サーキュラー・エコノミーとは?ビジネス事例&皮革産業の取り組み

理由としては
人口の増加や大量生産・大量消費型の経済システムによって見込まれる経済損失を防げるためです。

コンサルティング企業のアクセンチュア社の試算によると
サーキュラー・エコノミーの市場規模は2030年までに『4.5兆ドル』に成長すると予測されています。

またジュニパーリサーチ社の試算によれば、
シェアリングエコノミーの市場規模は2022年までに『402億ドル』に上ると試算されています。

OECD(経済協力開発機構)が2018年に発表した報告によると、
世界の資源利用量は90ギガトンから、2060年までに167ギガトンに増加するといわれています。

環境と経済の面からサーキュラー・エコノミーの効果は絶大です。

経済産業省と環境省のレポートによると
サーキュラー・エコノミーを含めたサステナブル投資が2018年に30兆ドルを突破し、
すでに投資市場の1/3を占めています。

サーキュラー・エコノミーのファッション業界ビジネス事例は?

Levis(リーバイス)

リーバイスは、240億ポンドのジーンズなどの衣料廃棄物を生み出している企業として、
短期および長期のサーキュラー・エコノミーのイニチアチブを推進しています。

サーキュラー・エコノミーとは?ビジネス事例&皮革産業の取り組み

Levis(リーバイス)

すべてのリーバイスストアは、他社を含むすべてのブランドの古着を回収し、
パートナー企業と協業しアップサイクルしています。

回収された古着は、ビルの断熱材、クッション材料、
新しい衣類のための繊維などに活用されています。

将来的には、古いジーンズから新しいジーンズを作りたいとしています。

NIKE(ナイキ)

1990年代から使用済みシューズの自主回収・リサイクルプログラム「Reuse-A-shoe」を導入するなど、
環境保全を意識した取り組みをしています。

サーキュラー・エコノミーとは?ビジネス事例&皮革産業の取り組み

NIKE(ナイキ)

また工場で出たスクラップを原料に取り入れて開発した「スペースヒッピー」など、
製品を製造する過程からも再生・リサイクルの考えを展開しています。

炭素と廃棄物の排出量ゼロを目指し、
地球環境やスポーツの未来を守る取り組み「Move to Zero」をうたっていて、
プラスチックボトルを再利用した再生ポリエステルや再生レザーも積極的に活用しています。

ファーストリテイリング

ファーストリテイリングのユニクロは、
全商品をリサイクル・リユースする「RE.UNIQLO」を推進しています。

サーキュラー・エコノミーとは?ビジネス事例&皮革産業の取り組み

ファーストリテイリング

着られなくなったダウン商品を店舗で回収して新たな服の素材として蘇らせ、
服としてリユースできないアイテムは回収後に燃料や防音材に再活用しています。

服のリユース品として、世界中の難民への支援にも役立てられています。

ほかにもジーンズの仕上げ加工時の水の使用量を最大99%削減したり、
取引先工場から店舗に至るまで化学物質や有害物質を出さないように配慮を行き渡らせたりするなど、
幅広い取り組みがあります。

Looptworks(ループワークス)

2009年に設立された「ループワークス」は、
廃棄材料を長く使える“意味ある”製品、
ジャケット、パーカー、スカート、Tシャツなどに転換しています。

サーキュラー・エコノミーとは?ビジネス事例&皮革産業の取り組み

Looptworks(ループワークス)

2014年には、サウスウエスト航空の使用済みシート皮革を
サッカーボール、バッグなどに転換しています。

他にはアラスカ航空の使用済みシートをハンドバッグや財布に転換しています。

このように使用済みの材料をデザインを付与したアップサイクル商品を販売しています。

Air Closet(エアークローゼット)

月額定額制のオンラインファッションレンタルサービスです。

サーキュラー・エコノミーとは?ビジネス事例&皮革産業の取り組み

Air Closet(エアークローゼット)

シェアリングやサブスクリプションの新しいビジネスモデルとして
ファッション業界から注目を集めています。

CircularID

ファッション業界では
「CircularID」と呼ばれる埋め込みタグを利用したデジタルシステムの導入が始まっています。

サーキュラー・エコノミーとは?ビジネス事例&皮革産業の取り組み

CircularID

CircularIDは、衣服そのものにマイクロチップを織り込み、服のライフサイクルのうちどの段階でも商品情報を追跡確認できるようにするデジタルシステムです。

CircularIDをスキャナーで読み込むと、
ブランド・カラー・価格・原料・生産国などといった「基本情報(服の出生証明書)」と、
服がどのように販売・購入・リセールされてきたかという「インタラクションログ(服のパスポート)」を閲覧することができます。

洋服をリサイクルするときも「情報」が不可欠です。

衣料品を生地へと作り替えるためには、
素材ごとに分ける必要があります。

衣料品はオーガニック繊維や合成繊維を織り交ぜて作られていることが多いため、
原料やその組成が正確に分からないとリサイクルするのが難しいです。

洋服の生地自体にマイクロチップを織り込むので、
服そのものがあれば個々の商品を識別・管理できるようになります。

いちいち過去のブランドラインナップを遡ったりデータを照合したりする手間を省くことができ、
よりスムーズなリセールやリサイクルが可能となります。

レザー業界のサーキュラー・エコノミービジネス事例

GUCCI(グッチ)

皮革のメタルまたはクロムフリーのなめし加工、
グッチ・スクラップレスプログラム、およびグッチ・アッププログラムなどを導入して、
製造工程における持続可能性や効率の向上、発生する廃棄物の削減により、
CO2換算3,000トンの排出を回避しました。

サーキュラー・エコノミーとは?ビジネス事例&皮革産業の取り組み

GUCCI(グッチ)

またナイロン・綿・カシミヤ・ポリエステル・貴金属・プラスチック・容器包装について、
リサイクルおよび再生素材の使用を拡大して、CO2換算1.3万トンの排出を削減するとともに、
循環型経済を支援しています。

循環型生産のビジョンに基づくイニシアチブ「グッチ・サーキュラーラインズ」からの初コレクション
「グッチ・オフザグリッド」も開始しています。

Timberland(ティンバーランド)

ティンバーランドは、タイヤメーカーおよび流通企業と協業し、
使用済みタイヤをシューズのアウトソールにリサイクルしています。

サーキュラー・エコノミーとは?ビジネス事例&皮革産業の取り組み

Timberland(ティンバーランド)

これは、タイヤ産業とシューズ産業というゴムの2大ユーザーのコラボレーションとなります。

MOTHERHOUSE(マザーハウス)

2020年に製品購入後の3つのトータルサービス
「SOCIAL VINTAGE(ソーシャルビンテージ)」をはじめました。

バッグをきれいに使い続けるために必要な「ケア」、
経年劣化で発生するほつれや破れを、マザーハウスとパートナーシップを組む修理工房で修理する「修理」、
使われなくなったマザーハウスのレザーバッグの「回収」のサービスです。

サーキュラー・エコノミーとは?ビジネス事例&皮革産業の取り組み

Social Vintage

特に回収に力を入れており
お客さまから回収されたバッグは工場で解体され、
その革を再利用して新たなシリーズ「RINNE」の商品に生まれ変わります。

サーキュラー・エコノミーとは?ビジネス事例&皮革産業の取り組み

Social Vintage2

回収に協力すると、ソーシャルポイントカードに通常の買い物に使えるポイント1,500円分が還元され、
別途1,000円分を途上国の公衆衛生対策に寄付できる仕組みとなっています。