レザー業界のサステナビリティ 三菱UFJリサーチ&コンサルティング【2020年度】

レザー業界ニュース

レザー産業へサステナビリティを求める動き

  • サステナビリティを含む社会問題の解決のための消費行動は「エシカル消費」とも呼ばれ、我が国も含め関心が高まりつつある。
  • 欧米で環境に悪影響を与える素材として皮革を挙げる人が3割程度存在し、数あるアパレル用素材の中でも上位に位置する。
    また、環境や原皮に有害な有毒化学物質の不使用や動物虐待のないことを重視する人々が多い。 

皮革関連産業におけるサステナビリティへの配慮に関する現状と課題

  • 欧米を中心に皮革関連産業におけるサステナビリティへの配慮の要請が高まっており、高級ブランドや大手皮革製品メーカーを中心にLWG(Leather Working Group)をはじめとする国際認証を取得している事業者からの皮革調達が拡大している。
  • 高級ブランド、大手メーカー等との取引や、海外輸出を行う皮革メーカーにとって、サステナビリティに関する国際認証の取得が不可欠になりつつある。これはイタリア・フランスの皮革関連産業界および国内の皮革製品メーカー、商社・卸事業者などで一致した認識である。
  • 現在国際的に普及が急速に進むLWG認証は環境パフォーマンスが要求されるなど認証取得のハードルが比較的高い。
    「日本エコレザー」は取り組みの一助となるが、国際的な認知不足や、基準がカバーする範囲、基準改定スピードを課題視する声もある。
  • 欧州では一般にアニマルウェルフェアへの配慮が要請され、皮革関連産業でも無視することができない状況にあるが、基本的には「食肉の副産物」であれば許容されている。
  • 日本国内の皮革製品メーカーや商社等でもアニマルウェルフェアに関する海外の状況は注視されており、サプライチェーンにおけるサステナビリティへの配慮の必要性が高まる中で、今後は皮革メーカーも看過することはできない状況にある。
  • EU諸国では畜産業におけるアニマルウェルフェアの対策が進んでいることを背景に一定程度アニマルウェルフェアに配慮した原皮を調達できる状況にある。
    皮革製造でトレンドとなっている原皮調達時のトレーサビリティの確保もアニマルウェルフェア対策として機能している。
    一方、国内産原皮は通常、「食肉の副産物」であるという点は充足されるが、畜産業におけるアニマルウェルフェアの対策の進捗や原皮のトレーサビリティの実現可能性の現状から、個々に確認や留意が必要な現状にある。

国内皮革関連産業における対応方針についてのアドバイス

サステナビリティへの配慮の必要性

  • 皮革関連産業をとりまく国内外の動向や「持続可能な開発目標」(SDGs)等の社会的要請から、今後は国内の皮革製造、皮革製品製造においても、環境・社会・経済の3つの観点から事業活動が及ぼす影響を考慮し、積極的にサステナビリティへの配慮に取り組むことが求められる。
  • サプライチェーンの上流に位置する皮革メーカーも喫緊の課題として認識し、段階的にでも対応を図っていくことが求められる。
  •  皮革製品メーカーや商社・卸事業者が皮革を調達する際、サステナビリティへ配慮しているかどうかが取引の継続や開始の重要な判断材料になりつつあることに留意が必要である

皮革メーカーによる取り組み方策

  • サステナビリティへの配慮を証明する手段として、また取り組むうえでの具体的な指針・マイルストーンとして、LWGやISO14001などの国際認証や日本エコレザーなどの国内認証の取得を目指して、対応を進めることも一つの有効な方策である。
  • 高級ブランドや大手メーカーとの取引や海外輸出展開においては、LWGなどの国際認証取得が不可欠になるなど、サステナビリティへの配慮は宣言ではなく証明が求められるものであることに留意する必要がある。
  • 認証取得にはコストや手間もかかる一方、取り組むことで事業活動プロセスの改善や効率化・生産性向上につながる面もある。何より認証取得により取引先や消費者へのアピールにつながり、新規の取引・顧客の開拓にもつながりやすくなることを考慮する必要がある。
  • 各認証制度は特徴や取得難易度が異なることから、自社が置かれている状況やターゲットとする顧客などを勘案しながら、どのように取り組むか、どの認証取得をめざすかは十分に検討する必要がある。
  • 現在、皮革分野では有名ブランドによって立ち上げられたLWG認証が急速に普及し国際的通用度が高いが、環境パフォーマンスが求められるため設備投資が必要になるなど取得難易度が比較的高く、相応の規模の事業者・工場でないと対応が難しい内容も含まれる。
  • 日本エコレザーはLWGと比べると国際的な通用度は低下するが、皮革製造メーカーの視点を考慮して基準が策定され取り組みやすい。
  • ISO14001は環境マネジメントシステムの中で最も国際的通用度の高い規格認証であり、マネジメントシステムの確立にもとづいて継続的な改善を図っていくものであることから、初めから環境パフォーマンスが要求されるLWG認証に比べると導入しやすい面がある。国内でも中小事業者向けに提供されているエコアクション21や段階的取り組みを後押しするエコステージといった環境マネジメントシステム認証制度が存在する。
  • 日本エコレザーや環境マネジメントシステムの認証取得から着手し、徐々にLWGといった難易度の高い認証にステップアップしていくことも考えられる。

アニマルウェルフェアへの配慮の方向性

  • 皮革関連産業におけるサステナビリティへの配慮の一環として、アニマルウェルフェアへの配慮にも留意する必要がある。
  •  現状では基本的に「食肉の副産物」であれば許容されるが、特定の皮革素材の使用回避や中止等を求める動物愛護団体等の意見など社会的な要請を注視し、対応を検討していくことが望まれる。
  • アニマルウェルフェアおよびその他のサステナビリティに関する対策を実施する体制づくりの一環として、国内皮革関連産業における流通の実情を踏まえながら、原皮や皮革のトレーサビリティを確保できるよう調達先への確認等を実施していくことが求められる。
  • 欧州諸国では皮革関連産業のサステナビリティへの対応の主要要素として、トレーサビリティの確保が含まれており、LWGやICECでも要求項目や認証基準に含まれていることに留意する必要がある。
  • 使用される原皮は、国内産、国外産を問わず、可能な限り、トレーサビリティが確保されているものを選択することが望ましい。その際、可能であれば、供給源となる畜産農家での飼養管理や食肉処理場での殺処分の方法がアニマルウェルフェアに配慮されているか確認することが望ましい。

官民および皮革関連産業界、関連業界等の連携による取り組み環境整備

  • 国内皮革関連産業界では中小・零細事業者が多く、サステナビリティへの配慮の取り組みやLWGなどの国際認証取得も容易に対応できないケースも多いと想定されることから、国、自治体、業界団体、皮革メーカー、皮革製品メーカー、商社・卸事業者等が連携して取り組みの環境を整えていくことが求められる。
    例:①国、自治体等による、生産性向上とサステナビリティへの配慮(エネルギー効率向上など)の双方に貢献する設備導入等を対象とする補助金の提供、または活用可能な補助金制度等の紹介
    ②国、自治体、業界団体等による、皮革メーカー、皮革製品メーカーの取り組みの事例、ノウハウ等の情報収集、提供
    ③皮革関連産業のバリューチェーンを通じた、皮革製品メーカー、商社・卸事業者、皮革メーカーの連携、相互支援
    ④業界団体や大手皮革メーカー、大手皮革製品メーカーの連携による、LWG等の国際認証取得の推進やPR活動を通じた、国内産皮革・皮革製品の品質とサステナビリティ面での信頼性の国際的発信、認知向上
    ⑤日本エコレザーなど業界団体等が提供する認証と国際認証における基準の調和・互換性の継続的かつタイムリーな検討や、段階的な取り組みを支援する認証制度その他支援ツール類の整備・提供
    ⑥皮革産地の分業体制における事業者間連携を通じた、サステナビリティへの配慮の取り組みや国際認証取得(LWG認証等)
  • 国内畜産業におけるアニマルウェルフェア対策の進捗を踏まえつつ、皮革関連産業および畜産業の業界団体等が連携して原皮のトレーサビリティやアニマルウェルフェアへの配慮に関する情報把握のあり方を検討していくことが求められる。

出典元

令和元年度 皮革産業振興対策調査等
(海外主要国における皮革関連産業のサステナビリティ活動等の動向・対応調査)
調査報告書
令和2年3月27日